「寡婦」より 著者:秋田滋
庭へ出ました。林のなかの空地の前まで来ると、あたりには白い靄《もや》がいちめんに立っておりました。林の
隙間を月が塞ごうとするかのように、綿のような靄がいちめんに漂っておりました。すると、その子は出し抜けに....
「狂人日記」より 著者:秋田滋
仕方が下手だった。彼は、犯罪が行われた時には、パンとチーズとを買いに村へ出かけて行っていた、叔父はその
隙に誰かに殺されたのだと申立てた。そんなことを誰が信じる。 十月二十八日―― あまりのことに度を失....
「初雪」より 著者:秋田滋
った。正面には、見上げるような樅の木叢《こむら》がたちはだかっていて、視界を遮っていたが、右のほうには
隙間があって、そこからは遠く農園のあたりまで伸びている、荒れ放題に荒れた野原が見えた。間道が一条、柵の....