「澄江堂雑記」より 著者:芥川竜之介
しめる俊寛」と「苦しまざる俊寛」とを描出するに便だつた為であらう。僕の俊寛もこの点では、菊池氏の俊寛の
蹤《あと》を追ふものである。唯菊池氏の俊寛は、寧《むし》ろ外部の生活に安住の因を見出してゐるが、僕のは....
「文芸的な、余りに文芸的な」より 著者:芥川竜之介
うに独創と云ふことの手軽に出来ないのを感じるのである。 僕等はたとひ意識しないにもせよ、いつか前人の
蹤《あと》を追つてゐる。僕等の独創と呼ぶものは僅かに前人の
蹤を脱したのに過ぎない。しかもほんの一歩位、....
「三太郎の日記 第一」より 著者:阿部次郎
て而も自己を凌駕する思想と生活とに逢着するが故に、廉價なる獨創の誇を振翳さない。古人及び今人に美しき先
蹤あるを知らずして、古き思想を新しき獨創として誇説する無學者の姿程醜くも慘ましくも滑稽なるものは尠い。....