「野人生計事」より 著者:芥川竜之介
萎《しを》れてゐるのを発見した。キユウピツドは十五か十六であらう。ちらりと見た顔は頬《ほほ》の落ちた、
腺病質《せんびやうしつ》らしい細おもてである。僕はN君に話しかけた。 「あのキユウピツドは悄気《しよげ....
「路上」より 著者:芥川竜之介
度は約束した手前、一時を糊塗《こと》する訳にも行かなかった。「あの女は看護婦でね、僕が去年の春|扁桃
腺《へんとうせん》を煩《わずら》った時に――まあ、そんな事はどうでも好い、とにかく僕とあの女とは、去年....
「星座」より 著者:有島武郎
てハンケチを取りだす暇もないので、両方の中指を眼がしらのところにあてて、俯向《うつむ》いたままじっと涙
腺を押えていた。 渡瀬さんはしばらくぼんやりしていたが、きゅうに慌てはじめたようだった。「悪かった....