「ある自殺者の手記」より 著者:秋田滋
いかと考えてみる。結局たしかなところを突止めることは出来ないので、そうした類いの自殺者に対しては、ただ
漠然と「不思議な」という言葉が使われるのだ。 そうした「動機もなく我とわが生命を断った」人間の一人が....
「狂人日記」より 著者:秋田滋
ひとりの人間などは問題にもなにもなっていないことが解るだろう。そこでは民族がすべてなのだ。生きもの、砂
漠の中に放浪生活を営む一種族の生きものとは、そもいかなるものであろうか。彼等は、利口で、殺すことなど何....
「墓」より 著者:秋田滋
声のように、わたくしの前に現れたのでした。人間がその一生を通じて希望というものに向けて放っている、あの
漠とした不断の叫び、その声に「おう」と応える声のように、彼女はわたくしの前にその姿を現わしたのでした。....