「魚河岸」より 著者:芥川竜之介
のフライを肴《さかな》に、ちびちび正宗《まさむね》を嘗め始めた。勿論|下戸《げこ》の風中や保吉は二つと
猪口《ちょく》は重ねなかった。その代り料理を平げさすと、二人とも中々《なかなか》健啖《けんたん》だった....
「大川の水」より 著者:芥川竜之介
ないながら両国の橋を通った時にも、大川は今のごとく、船宿の桟橋《さんばし》に、岸の青蘆《あおあし》に、
猪牙船《ちょきぶね》の船腹にものういささやきをくり返していたのである。 ことにこの水の音をなつかしく....
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
《ほつぎ》に同意して、当日は兼ねての約束通り柳橋の舟宿《ふなやど》で落合ってから、まだ月の出ない中に、
猪牙舟《ちょきぶね》で大川へ漕ぎ出しました。「あの頃の大川《おおかわ》の夕景色は、たとい昔の風流には....