「墓」より 著者:秋田滋
におい、腐敗したものが発散する悪気がむうッとあがって来て、わたくしの顔を撫でました。ああ、彼女の床には
菖蒲《しょうぶ》の香りが馥郁《ふくいく》と漂っていたのでありますが――。しかし、わたくしは棺を開けまし....
「或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
。 ついにその日の朝が来た。二人はまだ天が明けない内に、行燈《あんどう》の光で身仕度をした。甚太夫は
菖蒲革《しょうぶがわ》の裁付《たっつけ》に黒紬《くろつむぎ》の袷《あわせ》を重ねて、同じ紬の紋付の羽織....
「大正十二年九月一日の大震に際して」より 著者:芥川竜之介
に曰《いはく》、一游亭は撞木杖をついてゐる。) その上又珍らしいことは小町園《こまちゑん》の庭の池に
菖蒲《しやうぶ》も蓮《はす》と咲き競《きそ》つてゐる。 葉を枯れて蓮《はちす》と咲ける花あやめ ....