「世之助の話」より 著者:芥川竜之介
ので、無愛想な老爺《おやぢ》の、竹の子笠をかぶつたのが、器用に右左へ棹《さを》を使ふ。おまけにその棹の
雫《しづく》が、時々乗合の袖にかかるが、船頭はこれにも頓着する容子がない。――いや、平気なのは、まだ外....
「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
る事をおもひ居たり。この時われ等が周圍には寂として何の聲も聞えず、唯だ忽ち斷え忽ち續く、物寂しき岩間の
雫の音を聞くのみなりき。われはかく由《よし》なき妄想を懷きてしばしあたりを忘れ居たるに、ふと心づきて畫....
「可愛い山」より 著者:石川欣一
ちて来る。気持が悪くて仕方がない。色々と考えたあげく、蝋燭《ろうそく》で岩に線を引いて見た。伝って来た
雫《しずく》が、ここまで来て蝋にぶつかり、その線に添うて横にそれるだろうとの案であった。しばらくはこれ....