「木曽義仲論」より 著者:芥川竜之介
人跡亦幽なり、谷深く桟危くしては足を峙てて歩み、峰高く巌稠しては眼を載せて行く、尾を越え尾に向つて心を
摧き、谷を出で谷に入つて思を費す、東は信濃、上野、武蔵、相摸に通つて奥広く、南は美濃国に境道一にして口....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
の顔は部屋の暑さのためと、のぼせ上ったために湯気を出さんばかり赤くなっていた。 仁右衛門はすっかり打
摧《うちくだ》かれて自分の小さな小屋に帰った。彼れには農場の空の上までも地主の頑丈《がんじょう》そうな....
「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
ぶかと見れば又沈みつ。數分時の後、雙翼靜に水を蔽ひて、鳥は憩ふが如く見えしが、俄にはたゝく勢に、偏翼|
摧《くだ》け折るゝ聲、岸のほとりに聞えぬ。鳥は殘れる翼にて、二たび三たび水を敲き、つひに沈みて見えずな....