「或る女」より 著者:有島武郎
いたいという事だのが、思い入った調子で、下手《へた》な字体で書いてあった。葉子は忘却《ぼうきゃく》の廃
址《はいし》の中から、生々《なまなま》とした少年の大理石像を掘りあてた人のようにおもしろがった。「わ....
「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
面白きものを見せ、そなたをも景色と倶《とも》に寫すべし、と答へき。葡萄圃の間を過ぎ、古の混堂《ゆや》の
址《あと》を圍みたる白き石垣に沿ひて、ひたすら進みゆく程に羅馬の府の外に出でぬ。日はいと烈しかりき。緑....
「一握の砂」より 著者:石川啄木
》めにき 謎《なぞ》に似る わが学業のおこたりの因《もと》 教室の窓より遁《に》げて ただ一人 かの城
址《しろあと》に寝に行きしかな 不来方《こずかた》のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五《じふご》....