「仙人」より 著者:芥川竜之介
、その軒下へかけこんだ。まず、顔の滴をはらう。それから、袖をしぼる。やっと、人心地がついた所で頭の上の
扁額《へんがく》を見ると、それには、山神廟《さんじんびょう》と云う三字があった。 入口の石段を、二三....
「路上」より 著者:芥川竜之介
も今度は約束した手前、一時を糊塗《こと》する訳にも行かなかった。「あの女は看護婦でね、僕が去年の春|
扁桃腺《へんとうせん》を煩《わずら》った時に――まあ、そんな事はどうでも好い、とにかく僕とあの女とは、....
「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
朽ち果てたる橋柱、黒き影を印して立てり。この景色心に浮べば、あの折の心輕げなる少女子《をとめご》さへ、
扁鼓《ひらづゝみ》手に把《と》りて、「サルタレルロ」舞ひつゝ過ぐらむ心地す。(「サルタレルロ」の事をば....