「島木赤彦氏」より 著者:芥川竜之介
、大分こたえるぞ」などと常談のように声をかけたりした。この神経痛と思ったものが実は後に島木さんを殺した
癌腫の痛みに外ならなかったのである。 二三箇月たった後、僕は土屋文明君から島木さんの訃を報じて貰った....
「仙人」より 著者:芥川竜之介
昔の仙人は誰も皆不老不死の道に達してゐる。しかしこの「仙人」だけは世間並みにだんだん年をとり、最後に胃
癌《ゐがん》になつてしまつた。何でも死ぬ前夜には細り切つた両手をあげ、「あしたあたりはお目出度になるだ....
「冬」より 著者:芥川竜之介
は坂を登りながら、僕自身も肉体的にしみじみ疲れていることを感じた。僕の叔父《おじ》は去年の十一月に喉頭
癌《こうとうがん》のために故人になっていた。それから僕の遠縁の少年はこの正月に家出していた。それから―....