「黒百合」より 著者:泉鏡花
に見えなくなった。 やがて、夜が明け放れた時、お兼は新庄《しんじょ》の山の頂を越えた、その時は、裾を
紮《から》げ、荷を担ぎ、蝙蝠傘をさして、木賃宿から出たらしい貧しげな旅の客。破毛布《やぶれげっと》を纏....
「安藤昌益」より 著者:狩野亨吉
性なるを以て偏重偏輕を許さざるものとなる。是に於て古今東西の教法は悉く意味を爲さざるものとして、十把一
紮げに廢棄せらるるのみか、人を罪に陷るるための惡法なりと迄攻撃せらるるのである。統道眞傳佛失を糺す卷の....
「ディカーニカ近郷夜話 前篇」より 著者:ゴーゴリニコライ
亭主は帳場の中へ入つてしまふと、もうそれ以上は一と言も口をきかなかつた。 祖父は胆つ玉の小さい十把一
紮げの人間ではなかつた。或る時など、狼に出喰はすと、いきなりその尻尾を掴んで、生捕にしたものぢや。また....