「スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
に夢のようにひびくだけだった。生きものがいるしるしは、彼の身のそばにはなにもなかった。ただときどき、蟋
蟀《こおろぎ》がもの悲しく鳴いたり、食用|蛙《がえる》が近くの沼で、寝ごこちが悪くて急に床のなかで寝が....
「クラリモンド」より 著者:芥川竜之介
けた。そして、彼女の眠を醒ますまいと息をひそめながら其経帷子を上げて見た。わしの動悸は狂ほしく鼓動して
蟀谷《こめかみ》のあたりには蛇の声に似た音が聞えるかとさへ疑はれる。汗が額から滝の如く滴るのも、丁度わ....
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
た。執筆中は家内のものも、この書斎へははいって来ない。ひっそりした部屋の中では、燈心の油を吸う音が、蟋
蟀《こおろぎ》の声とともに、むなしく夜長の寂しさを語っている。 始め筆を下《おろ》した時、彼の頭の中....