「ファラデーの伝」より 著者:愛知敬一
旅行できることも書いてある。またパリが同盟軍に占領された由も書き加えてある。 ローマでは、モリシニが
鋼鉄の針に太陽の光をあてて磁石にするという、あやしい実験を見、月夜にコロシウムの廃趾を越え、朝早くカン....
「老いたる素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
剥がれた足に岩を踏んで、嶮しい山路を登つてゐた。岩むらの羊歯《しだ》、鴉《からす》の声、それから冷たい
鋼色《はがねいろ》の空、――彼の眼に入る限りの風物は、悉《ことごと》く荒涼それ自身であつた。「おれに....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
はそう呟《つぶや》きながら、静に箱の中の物を抜いた。その拍子に剃刀の※《におい》が、磨《と》ぎ澄ました
鋼《はがね》の※が、かすかに彼女の鼻を打った。 いつか彼女の心の中には、狂暴な野性が動いていた。それ....