「或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
執念《しゅうね》く敵打《かたきうち》の望を忘れなかった。喜三郎は彼の呻吟《しんぎん》の中に、しばしば八
幡大菩薩《はちまんだいぼさつ》と云う言葉がかすかに洩れるのを聞いた。殊にある夜は喜三郎が、例のごとく薬....
「おしの」より 著者:芥川竜之介
据《みす》えると、首を振り振りたしなめ出した。「お気をつけなさい。観音《かんのん》、釈迦《しゃか》八
幡《はちまん》、天神《てんじん》、――あなたがたの崇《あが》めるのは皆木や石の偶像《ぐうぞう》です。ま....
「木曽義仲論」より 著者:芥川竜之介
争ひたる源氏も、時利あらず、平治の乱以来逆賊の汚名を負ひて、空しく東国の莽蒼に雌伏したり。然りと雖も八
幡公義家が、馬を朔北の曠野に立て、乱鴻を仰いで長駆、安賊を鏖殺したる、当年の意気豈悉消沈し去らむ哉。革....