「良夜」より 著者:饗庭篁村
草、峰にも尾にも咲きまじる桜、皆な愉快と悲痛と混じたる強き感じの種となりて胸につかえたる碓氷も過ぎ、中
仙道を熊谷まで来たり。明日は馬車にてまっしぐら東京へ乗り込むべしと思えば心に勇みを持ち、この宿りにては....
「南洲手抄言志録」より 著者:秋月種樹
谷洞中に居る。砲丸雨の如く、洞口を出づる能はず。詩あり云ふ「百戰無功半歳間、首邱幸得返家山。笑儂向死如
仙客。盡日洞中棋響間」(編者曰、此詩、長州ノ人杉孫七郎ノ作ナリ、南洲翁ノ作ト稱スルハ誤ル)謂はゆる忙《....
「鴉片」より 著者:芥川竜之介
鴉片に死人を想はせるのはフアレエルの作品に始まつたのではない。僕はこの頃漫然と兪※《ゆゑつ》の「右台
仙館筆記《うたいせんくわんひつき》」を読んでゐるうちにかう云ふ俗伝は支那人の中にもあつたと云ふことを発....