「スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
バッドはそのような馬には誂《あつら》えむきの男だった。鐙《あぶみ》が短かったので、両膝《りょうひざ》が
鞍《くら》の前輪にとどくほど高くあがった。彼の尖《とが》った肱《ひじ》はばったの足のように突きだし、鞭....
「芋粥」より 著者:芥川竜之介
天鵞絨《びろうど》のやうな肩を、丸々と出してゐるのは、大方、比叡《ひえい》の山であらう。二人はその中に
鞍《くら》の螺鈿《らでん》を、まばゆく日にきらめかせながら鞭をも加へず悠々と、粟田口を指して行くのであ....
「木曽義仲論」より 著者:芥川竜之介
、震駭せざる能はざりき。如何に大狼狽したるよ。平治以来、螺鈿を鏤め金銀を装ひ、時流の華奢を凝したる、馬
鞍刀槍も、是唯泰平の装飾のみ。一門の子弟は皆、殿上後宮の娘子軍のみ、之を以て波濤の如く迫り来る革命軍に....