「ファラデーの伝」より 著者:愛知敬一
時々物忘れをして困るというような事も述べてある。ファラデーは随分と物忘れをして、困ったので、その発端は
既にこの時にあらわれている。仕方がないので、後にはポケットにカードを入れて置いて、一々の用事を書きつけ....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
婢《かひ》が「風呂に召されよ」と言いしも「風邪の心地なれば」とて辞し、夜食早くしたためて床に入りしが、
既往将来の感慨に夢も結ばず。雁の声いとど憐なりし。峠を越え山を下り野にはいろいろの春の草、峰にも尾にも....
「百万人のそして唯一人の文学」より 著者:青野季吉
小説とは、さういふ自分とさういふ形なき読者とのインチメートな対話として以外には考へられない。その読者は
既に形がない以上、数量で測れるやうなものでなく、即刻即座の反響が聞かれる筈もない。しかし彼が、作家の内....