「点鬼簿」より 著者:芥川竜之介
ている。顔も小さければ体も小さい。その又顔はどう云う訳か、少しも生気のない灰色をしている。僕はいつか西
廂記《せいそうき》を読み、土口気泥臭味の語に出合った時に忽《たちま》ち僕の母の顔を、――痩《や》せ細っ....
「森先生」より 著者:芥川竜之介
れしと記憶す。膝の上に小さき令息をのせられつつ、仏蘭西の小説、支那の戯曲の話などせられたり。話の中、西
廂記と琵琶記とを間違え居られし為、先生も時には間違わるる事あるを知り、反って親しみを増せし事あり。部屋....
「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
さま》を覗ひ居たり。帷《まどかけ》を引かざれば、室の内外の光景は明白に我眼に映ぜり。この家の裏の方、側
廂《かたびさし》に通ずる大なる梯《はしご》の室内より見ゆる處に、別に又一つの窓あるをも、われは此時始て....