「親ごころ」より 著者:秋田滋
した。そして、夢かと思われるような悦びに、今はもう口も利けない、その父母をかわるがわるひしとばかり擁き
緊めるのだった。 大きな幸福が訪れて来たことを知って、二人の婦人も泣いていた。 彼等はそれから連れ....
「寡婦」より 著者:秋田滋
うに、綿のような靄がいちめんに漂っておりました。すると、その子は出し抜けに立ちどまって、私の手をにぎり
緊《し》めて、こう云うのです。 「あれを御覧なさい。あれを――。でも、従姉《ねえ》さんには僕というもの....
「墓」より 著者:秋田滋
れぬ興奮で、わたくしの心を揺《ゆす》ぶるのでした。自分の掌《たなごころ》のなかに彼女の手を把《にぎ》り
緊《し》めていると、わたくしのこの胸には、それまで想像だもしなかったほどの愉しい気持ちが漲《みなぎ》っ....