「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
でも音楽が生まれるものと見える。 船はもう一個の敏活な生き物だ。船べりからは百足虫《むかで》のように
艪《ろ》の足を出し、艫《とも》からは鯨のように舵《かじ》の尾を出して、あの物悲しい北国特有な漁夫のかけ....
「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
》くして油の如し。試みに手をもて探れば、手も亦水と共に碧し。舟の影の水に落ちたるは極て濃き青色にして、
艪《ろ》の影は濃淡の紋理ある青蛇を畫けり。われは聲を放ちて叫びぬ。げに美しきは海なる哉。若し彼蒼《ひさ....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
くぶくと蟹《かに》の穴、うたかたのあわれを吹いて、茜《あかね》がさして、日は未《いま》だ高いが虫の声、
艪《ろ》を漕《こ》ぐように、ギイ、ギッチョッ、チョ。 「さあ、お掛け。」 と少年を、自分の床几《しょ....