「春の心臓」より 著者:芥川竜之介
しい夜の一つであつた。スルウスの森は遠く南に至るまで緑柱石を刻んだ如くに見え、それを映す水は亦青ざめた
蛋白石《たんぱくせき》の如く輝いてゐた。少年の集めてゐる薔薇は燦めく紅宝石《ルビー》の如く、百合はさな....
「LOS CAPRICHOS」より 著者:芥川竜之介
話してゐても、自然と唾気《つばき》がたまつて来ますぜ。そりや清湯燕窩《せいたうえんくわ》だとか清湯|鴒
蛋《れいたん》だとかとは、比べものにも何《なに》にもなりませんや。所が今日《けふ》その眼を抜いて見ると....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
なく奪うものだ。 アミイバが触指を出して身外の食餌《しょくじ》を抱《かか》えこみ、やがてそれを自己の
蛋白素《プロトプラズム》中に同化し終るように、私の個性は絶えず外界を愛で同化することによってのみ生長し....