「クリスマス・イーヴ」より 著者:アーヴィングワシントン
れてゐた。門扉を支へる巨大な角柱は頂上に一家の紋章をめぐらしてあつた。門に接しては番人の家があつたが、
鬱蒼たる樅の樹蔭に隱れ、殆ど植込の中に埋つてゐた。 馭者は門番の大きな鐘を鳴した、鐘の音は靜かな凍て....
「スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
面を進んで行った。その日の午後には、彼はこの丘をあんなに楽しげに越えてきたのだった。時刻も彼と同様、陰
鬱《いんうつ》だった。はるか下のほうには、タッパン・ジーの水が暗く、ぼんやり、荒寥《こうりょう》とひろ....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
旅に上りぬ。路用として六円余、また東京へ着して三四ヶ月の分とて三十円、母が縫いて与えられし腹帯と見ゆる
鬱金《うこん》木綿の胴巻に入れて膚にしっかと着けたり。学校の教師朋友などが送別の意を表して墨画の蘭竹ま....