「百万人のそして唯一人の文学」より 著者:青野季吉
古く、藤村の「家」も、秋声の「あらくれ」も、二葉亭の「其面影《そのおもかげ》」も、漱石の諸長篇も、
鴎外の史伝小説も、新聞に連載された。その意味で新聞小説であつた。しかし当時の新聞と現代の新聞との相違は....
「木曽義仲論」より 著者:芥川竜之介
山風に飜されたり。時に彼、年二十七歳、赤地の錦の直垂に、紫裾濃の鎧を重ね、鍬形の兜に黄金づくりの太刀、
鴎尻に佩き反らせたる、誠に皎として、玉樹の風前に臨むが如し。天下風を仰いで其旗下に集るもの、実に五万余....