「奇遇」より 著者:芥川竜之介
には落着いた王生が、花磁盞《かじさん》を前にうっとりと、どこかの歌の声に聞き入っていると、陽気な趙生は
酢蟹《すがに》を肴に、金華酒《きんかしゅ》の満《まん》を引きながら、盛んに妓品《ぎひん》なぞを論じ立て....
「十円札」より 著者:芥川竜之介
た。それから庭先の夕明りの中へ長ながと巻煙草の煙を出した。この一枚の十円札もこう云う楽書の作者にはただ
酢《すし》にでもするかどうかを迷わせただけに過ぎなかったのであろう。が、広い世の中にはこの一枚の十円札....
「俊寛」より 著者:芥川竜之介
》の上に、楽々と御坐りなすったまま、いろいろ御馳走《ごちそう》を下さいました。勿論この島の事ですから、
酢《す》や醤油《しょうゆ》は都ほど、味が好《よ》いとは思われません。が、その御馳走の珍しい事は、汁、鱠....