「親ごころ」より 著者:秋田滋
傍にたたずんで道ゆく人の袖にすがった。旅人の姿をみると、悲しそうな顔をして、情けない声をしぼって哀れを
訴えた。また、正午《まひる》の野良で、一株の木のまわりに集って弁当をつかっている百姓の一団を見かけると....
「狂人日記」より 著者:秋田滋
が、彼の棺に、哀惜の言葉と、心からの涙を注いだのである。 ところが、その死後、いつも彼が、重罪犯人の
訴訟記録をしまっていた事務机の中から、悲歎にくれた公証人が、次のような、奇怪な書きものを見つけ出した。....
「アグニの神」より 著者:芥川竜之介
ました。 「折角御嬢さんの在《あ》りかをつきとめながら、とり戻すことが出来ないのは残念だな。一そ警察へ
訴えようか? いや、いや、支那の警察が手ぬるいことは、香港でもう懲り懲りしている。万一今度も逃げられた....