「ファラデーの伝」より 著者:愛知敬一
り 十二月二十九日にパリを立ち、郊外のフォンテン・ブローを過ぐる際、折りしも森林は一面に結晶した白い
氷で被われて、非常な美観を呈していた。リオン、モンペリエ、ニースを過ぎて、地中海の岸にヨウ素を探し、翌....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
ろいろの春の草、峰にも尾にも咲きまじる桜、皆な愉快と悲痛と混じたる強き感じの種となりて胸につかえたる碓
氷も過ぎ、中仙道を熊谷まで来たり。明日は馬車にてまっしぐら東京へ乗り込むべしと思えば心に勇みを持ち、こ....
「狂女」より 著者:秋田滋
。それは絶えて知るよしもなかった。 それから、夜となく昼となく雪が降りつづく季節が来て、野も、森も、
氷のような粉雪の屍衣のしたに埋もれてしまった。狼が家の戸口のそばまで来て、しきりに吼えた。 行きがた....