「初雪」より 著者:秋田滋
この地を訪れるであろう。しかるに自分はどうか。名ばかりながら今は生きながえらえている哀れなこの五体は、
柏の柩《ひつぎ》の底に、経帳子《きょうかたびら》にしようと自分が選んでおいたあの絹衣《きもの》につつま....
「老いたる素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
したのであつた。 彼等は一しよに食事をしたり、未来の計画を話し合つたりした。時々は宮のまはりにある、
柏の林に歩みを運んで、その小さな花房の地に落ちたのを踏みながら、夢のやうな小鳥の啼く声に、耳を傾ける事....
「開化の殺人」より 著者:芥川竜之介
幸か、運命はこの危険なる時期に際して、予を予が年少の友たる本多子爵と、一夜|墨上《ぼくじやう》の旗亭|
柏屋《かしはや》に会せしめ、以て酒間その口より一場の哀話を語らしめたり。予はこの時に至つて、始めて本多....