「猿蟹合戦」より 著者:芥川竜之介
ないどころか、あたかも蟹は穴の中に、臼は台所の土間《どま》の隅に、蜂は軒先《のきさき》の蜂の巣に、卵は
籾殻《もみがら》の箱の中に、太平無事な生涯でも送ったかのように装《よそお》っている。 しかしそれは偽....
「一塊の土」より 著者:芥川竜之介
。しかし見えない鞭の影は絶えず彼女を脅《おび》やかしてゐた。或時は風呂を焚《た》かなかつた為に、或時は
籾《もみ》を干し忘れた為に、或時は牛の放れた為に、お住はいつも気の強いお民に当てこすりや小言を云はれ勝....
「文芸的な、余りに文芸的な」より 著者:芥川竜之介
たちを待てるであらう。或は又どの位不安になつて新来の作家たちを待てるであらう。 所謂「真の批評家」は
籾《もみ》を米から分つ為に批評のペンを執るであらう。僕も亦時々僕自身の中にかう云ふメシア的欲望を感じて....