「初雪」より 著者:秋田滋
の時刻にならなければ帰って来なかった。絶えず猟に出かけていたからである。猟に行かなければ行かないで、種
蒔きやら耕作やら、耕地のさまざまな仕事に追われていた。そして、良人は毎日、嬉しそうな顔をして、泥まみれ....
「或日の大石内蔵助」より 著者:芥川竜之介
藤左衛門や忠左衛門と共に、笑ってすませる筈のこの事実が、その時の満足しきった彼の心には、ふと不快な種を
蒔《ま》く事になった。これは恐らく、彼の満足が、暗々の裡《うち》に論理と背馳《はいち》して、彼の行為と....
「魚河岸」より 著者:芥川竜之介
岸《うおがし》の往来を歩いていた。三人の友だちとは、俳人の露柴《ろさい》、洋画家の風中《ふうちゅう》、
蒔画師《まきえし》の如丹《じょたん》、――三人とも本名《ほんみょう》は明《あか》さないが、その道では知....