「年末の一日」より 著者:芥川竜之介
にもお墓はなかった。僕は勿論《もちろん》苛《い》ら苛《い》らして来た。しかしその底に潜んでいるのは妙に
侘《わび》しい心もちだった。僕はいつか外套の下に僕自身の体温を感じながら、前にもこう言う心もちを知って....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
の形《かた》ばかりの仮家《かりや》を建《た》てて、一|族《ぞく》の安否《あんぴ》を気《き》づかいながら
侘《わび》ずまいをして居《お》りました。只今《ただいま》私《わたくし》が祀《まつ》られているあの小桜神....
「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
も、むかしの羈※《きづな》の再び我身に纏《まつは》るゝを覺えて、只だ恩人に見放されたる不幸なる身の上を
侘《かこ》ちぬ。公子は我を慰めがほに、又詞を繼いで云ふやう。否々、おん身を見放さんはをぢ君の志にあらず....