「老いたる素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
何人《なんぴと》も、この勇猛な部落の長から、受けたことのない待遇であつた。若者たちも始めの内は、彼の意
嚮《いかう》を量《はか》りかねて、多少の畏怖を抱いたらしかつた。しかし酒がまはり出すと、彼の所望する通....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
か》らなかった。彼は勿論出来るだけ、こう云う争いを起させまいとした。が、彼等は彼等自身のために、彼の意
嚮《いこう》には頓着なく、ほとんど何事にも軋轢《あつれき》し合った。そこには何か宿命的な、必然の力も動....
「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
免れざるところなりしなるべし。 險《けは》しきを行くこと夷《たひらか》なる如き筆力、望み瞻《み》る方
嚮《はうかう》に從ひて無遠慮なるまで肢體の尺を縮めたる遠近法は、個々の人物をして躍りて壁面を出でしめん....