「鸚鵡」より 著者:芥川竜之介
思ふほど熱かりし由。又何か落つると思へば、電線を被《おほ》へる鉛管《えんかん》の火熱《くわねつ》の為に
熔《と》け落つるなり。この辺《へん》より一層人に押され、度《たび》たび鸚鵡《あうむ》の籠も潰《つぶ》れ....
「大正十二年九月一日の大震に際して」より 著者:芥川竜之介
めしむ。 夜《よる》また円月堂の月見橋のほとりに至れば、東京の火災|愈《いよいよ》猛に、一望大いなる
熔鉱炉《ようくわうろ》を見るが如し。田端《たばた》、日暮里《につぽり》、渡辺町等《わたなべちやうとう》....
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
檜皮葺《ひわだぶき》の屋根の向こうに、むらがっているひでり雲《ぐも》も、さっきから、凝然と、金銀銅鉄を
熔《と》かしたまま、小ゆるぎをするけしきはない。まして、両側に建て続いた家々は、いずれもしんと静まり返....