「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
《ひろ》き急流となり、乳色の渦卷を生じて底《そこひ》なき深谷に漲《みなぎ》り落つ。雷の如き響は我胸を鼓
盪《こたう》して、我失望我苦心と相應じ、我をして前《さき》に小尼公《アベヂツサ》の爲めにチヲリの瀧の前....
「女郎買の歌」より 著者:石川啄木
一節がある。 狂ほへる酒に夢みる情緒と、あたゝかき抱擁に微睡む官能とは、時來るや突如として眼覺め、振
盪して微妙なる音樂を節奏し、閃めき來つて恍惚たる繪畫を點綴す。 著者は糜爛せる文明が生める不幸兒なり....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
挙《あ》ぐれば、車輪はその輻《やぼね》の見るべからざるまでに快転せり。乗り合いは再び地上の瀾《なみ》に
盪《ゆ》られて、浮沈の憂《う》き目に遭《あ》いぬ。 縦騁《しょうてい》五分間ののち、前途はるかに競争....