「スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
るか下のほうには、タッパン・ジーの水が暗く、ぼんやり、荒寥《こうりょう》とひろがり、陸のかげにしずかに
碇《いかり》をおろしている帆かけ舟の高い帆柱があちらこちらに見えていた。真夜中のひっそりした静けさのな....
「軍艦金剛航海記」より 著者:芥川竜之介
、艦が既に豐後水道を瀬戸内海へはいつた事を知つた。して見ると遲くも午後の二時か三時には山口縣下の由宇の
碇泊地へ入るのに相違ない。 僕は妙に氣が輕くなつた。僅か何日かの海上生活が、僕に退屈だつたと云ふので....
「少年」より 著者:芥川竜之介
東京湾も当時の保吉には驚異だった。奈良朝の歌人は海に寄せる恋を「大船《おおふね》の香取《かとり》の海に
碇《いかり》おろしいかなる人かもの思わざらん」と歌った。保吉は勿論恋も知らず、万葉集の歌などと云うもの....