「開化の殺人」より 著者:芥川竜之介
温良貞淑の称ある夫人明子を遇するや、奴婢《どひ》と一般なりと云ふに至つては、誰か善く彼を目して、人間の
疫癘《えきれい》と做《な》さざるを得んや。既に彼を存するの風を頽《おと》し俗を濫《みだ》る所以《ゆゑん....
「木曽義仲論」より 著者:芥川竜之介
づ動いて万波次いで起り、遂に、又救ふ可らざる禍機に陥り了れり。加ふるに、京師に祝融の災あり。※風地震悪
疫亦相次いで起り、庶民堵に安ぜず、大旱地を枯らして、甸服の外、空しく赤土ありて青苗将に尽きなむとす。「....
「黒衣聖母」より 著者:芥川竜之介
の子が、重い痲疹《はしか》に罹《かか》りました。稲見の母親はお栄《えい》と云って、二三年|前《ぜん》の
疫病に父母共世を去って以来、この茂作と姉弟二人、もう七十を越した祖母の手に育てられて来たのだそうです。....