「運」より 著者:芥川竜之介
、心晴らしに、何気《なにげ》なく塔の奥へ行って見ると、どうでございましょう。綾や絹は愚《おろか》な事、
珠玉とか砂金《さきん》とか云う金目《かねめ》の物が、皮匣《かわご》に幾つともなく、並べてあると云うじゃ....
「老いたる素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
嗚に、遠い国の若者を引き合はせた。 若者は眉目の描いたやうな、肩幅の広い男であつた。それが赤や青の頸
珠《くびたま》を飾つて、太い高麗剣《こまつるぎ》を佩《は》いてゐる容子《ようす》は、殆ど年少時代そのも....
「大久保湖州」より 著者:芥川竜之介
かつ》て一時に数人の侍妾を設け置きし覚えある男の言と識るべし。人を殺しし罪ほろぼしの外に言ひ難き懺悔の
珠数をば繰らざりしにや。徒士《かち》の者奥の女中に文を送りしとて、徒士頭松平若狭守改易の罪に処せられき....