「隅田の春」より 著者:饗庭篁村
きに、只《ただ》嬉《うれ》しくて堪《こら》へられず、車を下《お》りて人の推《お》すまゝに押されて、言問
団子《ことゝひだんご》の前までは行《ゆ》きしが、待合《まちあは》す社員友人の何処《いづこ》にあるや知ら....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
見らるるに、葛布にて張りたる襖しとやかに明きて清げなる小女茶を運び出でたり。忝けなしと斜に敷きたる座蒲
団よりすべりてその茶碗を取らんとするとき、女はオオと驚くに予も心付きてヤヤと愕きたり。「蘭の鉢を庭へ出....
「親ごころ」より 著者:秋田滋
しぼって哀れを訴えた。また、正午《まひる》の野良で、一株の木のまわりに集って弁当をつかっている百姓の一
団を見かけると、一片《ひときれ》の麪麭《パン》をねだった。そして二人は、溝のふちにしょんぼり肩を並べて....