「夢の如く出現した彼」より 著者:青柳喜兵衛
蹴散らし、いささかのセンチを目に浮べて、悲喜交々、闘志を抱いて渡る関門の海峡を、逆に白波を追っていた連
絡船の中で、夢野久作の正体を発見したのである。 「オオ、ジッちゃんじゃないか、此頃あたしゃ、こげえなこ....
「あばばばば」より 著者:芥川竜之介
ても、勘定台の後ろに坐つてゐる。尤も今では最初のやうに西洋髪などには結《ゆ》つてゐない。ちやんと赤い手
絡《てがら》をかけた、大きい円髷《まるまげ》に変つてゐる。しかし客に対する態度は不相変妙にうひうひしい....
「凶」より 著者:芥川竜之介
、もう一度僕のタクシイの前にぼんやりと後ろを現し出した。僕はまだその時までは前に挙げた幾つかの現象を聯
絡《れんらく》のあるものとは思はなかつた。しかしこの自動車を見た時、――殊にその中の棺を見た時、何もの....