「スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
。相手もおなじようにした。彼は憂鬱になってきた。讃美歌をまたはじめようとしたが、からからに乾いた舌が上
顎《うわあご》にくっついてしまった。一節も歌えなかった。この執拗《しつよう》な道連れが不機嫌におし黙っ....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
返さなかった。「後生ですから、ねえ、あなた――」 お蓮は涙を隠すように、黒繻子《くろじゅす》の襟へ
顎《あご》を埋《うず》めた。「御新造は世の中にあなた一人が、何よりも大事なんですもの。それを考えて上....
「クラリモンド」より 著者:芥川竜之介
奮つて、わしは、僧侶などになり度く無いと叫ばうとした。が、どうしてもそれが出来なかつた。わしには舌が上
顎に附着してしまつたやうな気がしたのである。わしは否定の綴音を一つでも洩して、わしの意志を表白する事す....