「貝殻」より 著者:芥川竜之介
二 河鹿 或温泉にゐる母から息子《むすこ》へ人伝《ひとづ》てに届けたもの、――桜の実《み》、
笹餅、土瓶《どびん》へ入れた河鹿《かじか》が十六匹、それから土瓶の蔓に結《むす》びつけた走り書きの手紙....
「河童」より 著者:芥川竜之介
なるばかりなのです。「ええ、一そ登つてしまへ。」――僕はかう考へましたから、梓川の谷を離れないやうに熊
笹の中を分けて行きました。 しかし僕の目を遮るものはやはり深い霧ばかりです。尤も時々霧の中から太い毛....
「河童」より 著者:芥川竜之介
るばかりなのです。「ええ、いっそ登ってしまえ。」――僕はこう考えましたから、梓川の谷を離れないように熊
笹《くまざさ》の中を分けてゆきました。 しかし僕の目をさえぎるものはやはり深い霧ばかりです。もっとも....