「或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
二人はそれから行燈《あんどう》を囲んで、夜もすがら左近や加納親子の追憶をさまざま語り合った。が、彼等の
菩提《ぼだい》を弔《とむら》っている兵衛の心を酌《く》む事なぞは、二人とも全然忘却していた。 平太郎....
「或旧友へ送る手記」より 著者:芥川竜之介
、みづから神としないものである。いや、みづから大凡下《だいぼんげ》の一人としてゐるものである。君はあの
菩提樹《ぼだいじゆ》の下に「エトナのエムペドクレス」を論じ合つた二十年前を覚えてゐるであらう。僕はあの....
「槐」より 著者:芥川竜之介
父《おやぢ》だのお袋だのの稽古してゐるのを聞き覚えたのである。その文句《もんく》は何《なん》でも観世音
菩薩《くわんぜおんぼさつ》の「庭に年《とし》経《へ》し槐《ゑんじゆ》の梢《こずゑ》」に現れるとか何《な....