「クリスマス・イーヴ」より 著者:アーヴィングワシントン
てゐた。門扉を支へる巨大な角柱は頂上に一家の紋章をめぐらしてあつた。門に接しては番人の家があつたが、鬱
蒼たる樅の樹蔭に隱れ、殆ど植込の中に埋つてゐた。 馭者は門番の大きな鐘を鳴した、鐘の音は靜かな凍てつ....
「一片の石」より 著者:会津八一
に立て、今一つをば漢江の深い淵に沈めさせた。万世の後に、如何なる天変地異が起つて、よしんば山上の一碑が
蒼海の底に隠れるやうになつても、その時には、たぶん谷底の方が現はれて来る。こんな期待をかけてゐたものと....
「親ごころ」より 著者:秋田滋
、やッぱりいない。そこで父親は道ばたに出て、声を限りに呼んだ。 「ジャン! ジャーン!」 もう暮色が
蒼然とあたりに迫っていた。夕靄が烟《けぶ》るように野末にたち罩《こ》め、ものの輪廓が、ほの暗い、はるか....