「芋粥」より 著者:芥川竜之介
なると云ふ事が、さう早く、来てはならないやうな心もちがする。さうして又、この矛盾した二つの感情が、互に
剋し合ふ後には、境遇の急激な変化から来る、落着かない気分が、今日の天気のやうに、うすら寒く控へてゐる。....
「小説作法十則」より 著者:芥川竜之介
挙げたる三条により、詩人的才能、歴史家的乃至伝記作者的才能、処世的才能の三者に帰着すべし。この三者を相
剋せしめざることは前人も至難の業としたり。(至難の業とせざりしものは凡庸の才なり。)小説家たらんとする....
「文芸的な、余りに文芸的な」より 著者:芥川竜之介
思想家たるべきハムレツトが父の仇《かたき》を打たなければならぬ王子だつた悲劇である。これも亦或は両面の
剋《こく》し合つた悲劇と言はれるであらう。僕等の日本は歴史上にもかう云ふ人物を持ち合せてゐる。征夷《せ....