「夢の如く出現した彼」より 著者:青柳喜兵衛
道を、白波たつ波頭を蹴散らし蹴散らし、いささかのセンチを目に浮べて、悲喜交々、闘志を抱いて渡る関門の海
峡を、逆に白波を追っていた連絡船の中で、夢野久作の正体を発見したのである。 「オオ、ジッちゃんじゃない....
「お時儀」より 著者:芥川竜之介
の中にお嬢さんのことばかり考えつづけた。汽車は勿論そう云う間《あいだ》も半面に朝日の光りを浴びた山々の
峡《かい》を走っている。「Tratata tratata tratata trararach」(大正十二年九月)....
「木曽義仲論」より 著者:芥川竜之介
気と、彼が旗下に投ぜる木曾の健児とは、実に、木曾川の長流と木曾山脈の絶嶺とに擁せられたる、此二十里の大
峡谷に養はれし也。然らば彼が家庭は如何。麻中の蓬をして直からしむものは、蓬辺の麻也。英雄の児をして英雄....