「クリスマス・イーヴ」より 著者:アーヴィングワシントン
んだ黒ずんだ肖像畫が悲し氣に壁の上からわたしをぢつと見詰めてゐた。寢臺はどつしりしたダマスク織で、色は
褪せてゐたけれど高い帳《とばり》が附いて居り、張出窓と向ひ合つた壁の窪みに据ゑてあつた。床に入るか入ら....
「ある自殺者の手記」より 著者:秋田滋
いるのだ。かつて私の目には曙のひかりのように明るい輝きを放っていた人生の出来事が、昨今の私にはすべて色
褪せたものに見えるのである。物ごとの意味が私には酷薄な現象のままのすがたで現れだした。愛の何たるかを知....
「芋粥」より 著者:芥川竜之介
つ》、どうして、基経に仕へるやうになつたのか、それは誰も知つてゐない。が、余程以前から、同じやうな色の
褪《さ》めた水干《すゐかん》に、同じやうな萎々《なえなえ》した烏帽子《ゑぼし》をかけて、同じやうな役目....