「狂人日記」より 著者:秋田滋
は、この世界のあらゆるものの経歴を、存在するすべてのものを含んでいる。殺すということは、なぜ、人の心を
酔わせるのだろう。 六月二十五日―― 生きものが、彼方にいて、生き、歩き、走っていると考えてみる。....
「初雪」より 著者:秋田滋
人たちが、南国のあたたかい空気を慕って、今よりは少しばかり大きくなった子供を連れて、希望にもえ、愛情に
酔い、幸福にひたった心を抱いて、再びこの地を訪れるであろう。しかるに自分はどうか。名ばかりながら今は生....
「秋」より 著者:芥川竜之介
にある、寂しい茶の間の暮方を思ひ出さずにゐられなかつた。 話は食後の果物を荒した後も尽きなかつた。微
酔を帯びた俊吉は、夜長の電燈の下にあぐらをかいて、盛に彼一流の詭弁《きべん》を弄した。その談論風発が、....