「枯野抄」より 著者:芥川竜之介
何日か続いた今日、かうして師匠の枕もとで、末期の水を供する段になると、道徳的に潔癖な、しかも存外神経の
繊弱な彼が、かう云ふ内心の矛盾の前に、全然落着きを失つたのは、気の毒ではあるが無理もない。だから去来は....
「金春会の「隅田川」」より 著者:芥川竜之介
なかつた)難を云はせれば、金太郎氏の芸は心もち綺麗過ぎる所があるかも知れない。それだけに一歩を誤れば、
繊巧の病を生じさうである。古人は必ずこの境に安住することはしなかつたであらう。更に蒼古の意を得る為に捨....
「佐藤春夫氏の事」より 著者:芥川竜之介
一身、詩仏と詩魔とを併せ蔵すと云うも可なり。 四、佐藤の詩情は最も世に云う世紀末の詩情に近きが如し。
繊婉にしてよく幽渺たる趣を兼ぬ。「田園の憂欝」の如き、「お絹とその兄弟」の如き、皆然らざるはあらず。こ....