「隅田の春」より 著者:饗庭篁村
うめ》の花、軒《のき》に匂《かんば》しく鶯《うぐひす》の声いと楽しげなるに、室《しつ》を隔《へだ》てゝ
掻《か》きならす爪音《つまおと》、いにしへの物語ぶみ、そのまゝの趣《おもむき》ありて身も心も清《きよ》....
「芋粥」より 著者:芥川竜之介
く別人として、映るやうになつた。栄養の不足した、血色の悪い、間のぬけた五位の顔にも、世間の迫害にべそを
掻いた、「人間」が覗いてゐるからである。この無位の侍には、五位の事を考へる度に、世の中のすべてが急に本....
「尾形了斎覚え書」より 著者:芥川竜之介
。何卒《なにとぞ》、私心根を不憫《ふびん》と思召《おぼしめ》され、此儀のみは、御容赦下され度候。」など
掻き口説《くど》き咽《むせ》び入り候。邪宗門の宗徒とは申しながら、親心に二《に》無き体《てい》相見え、....