「初雪」より 著者:秋田滋
くような声で云った。 「そうでもすれば、すこしは気晴しになると思うんですの」 しかし良人には妻の意が
汲みかねた。 「気晴しッて、それアまた何のことだい? 芝居かい、夜会かい。それとも、巴里へ行って美味《....
「芋粥」より 著者:芥川竜之介
りに動いてゐる。火を焚きつけるもの、灰を掻くもの、或は、新しい白木の桶《をけ》に、「あまづらみせん」を
汲んで釜の中へ入れるもの、皆芋粥をつくる準備で、眼のまはる程忙しい。釜の下から上る煙と、釜の中から湧く....
「尾形了斎覚え書」より 著者:芥川竜之介
を落命致させては、其甲斐、万が一にも無之《これな》かる可く候。何卒泥烏須如来に背き奉り候私心苦しさを御
汲み分け下され、娘一命、如何にもして、御取り留め下され度候。」と申し、私のみならず、私下男足下にも、手....